家族信託は、資産を柔軟に管理・運用する仕組みとして注目されていますが、実際に始めるとなると「受託者」に大きな責任と負担がかかる場面も少なくありません。特に信頼できる家族を受託者に任命するケースでは、思わぬデメリットが生じることもあります。本コラムでは、家族信託によるデメリットについて解説します。
受託者は信託財産を管理・処分する法的な権限を持つ一方で、その行動には常に「善管注意義務」や「忠実義務」が伴います。つまり、財産の管理に関して責任を問われる立場になるため、知識や判断力が求められるのです。専門知識がない家族が受託者となった場合、「どう運用してよいかわからない」「ミスをしたら損害賠償が発生するのでは」と不安を感じることもあるでしょう。
実際に多いケースのひとつとして、親名義の不動産を受託者である子が管理する場面が挙げられます。この場合、固定資産税の納付、賃貸契約の更新や解約、修繕の判断など、日常的に多くの手続きが必要になります。また、不動産の売却を行う場合には関係者の理解を得る必要もあり、家族間でのトラブルが起こる可能性もあります。
さらに、受託者の報酬についても問題になります。基本的には無償であることが多いですが、管理の手間や責任の重さを考えると、継続的に対応していくには負担が大きいと感じる人も少なくありません。報酬を支払う場合にも、金額設定や課税の問題を含めてあらかじめ検討しておくことが重要です。
こうした受託者の負担を軽減するために、家族信託の契約時にはあらかじめ「何をどこまで任せるのか」を明確にし、必要に応じて司法書士や税理士といった専門家のサポートを受ける体制を整えておくことが望ましいでしょう。
本コラムでは、家族信託のデメリットを紹介しました。資産管理に有効な仕組みですが、受託者には多くの責任が伴います。不動産管理や契約手続き、税務対応など、実務的な負担が想像以上に大きく、家族間でのトラブルにもつながりかねません。報酬や義務についての取り決めを事前に明確にし、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、受託者の負担を軽減できます。制度のメリットだけでなく、受託者の立場や負担といったデメリットを理解したうえで、無理のない設計を心がけましょう。